2023年10月27日に掲載したコラムに関連するTikTokの動画に、以下のコメントを頂きました。コメントありがとうございます。

2023年10月27日掲載コラム
→『不倫をされた場合の慰謝料はどのくらい?

今回は、風俗店の利用と、離婚や慰謝料について説明します。

風俗店の利用を理由に離婚できるのか?

そもそも、風俗店の利用は法的な離婚理由となるのでしょうか。 裁判で離婚が認められるパターンは、この5つでした。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

【裁判で離婚が認められる場合】の詳しい解説はこちらをご覧ください。
2023年10月31日掲載コラム
→『
裁判で離婚が認められるのは、どんな場合?《民法770条を分かりやすく解説》

今回は、この中で①と⑤が関係します。

まずは①の検討をします。〈不貞な行為〉とは、原則として性交渉を指しています。ですから、風俗店の利用について、①を根拠に離婚する場合、性交渉があったことを証明する必要があります。

一般的に、風俗店のなかでも、ソープランドは性交渉を伴うサービスがあると認識されているため、あなたの配偶者(夫・妻)がソープランドに行った事実を証明できれば、①を根拠に離婚が認められる可能性が高くなります。

ですが、ソープランド以外の風俗店の場合、具体的には、ヘルス、ピンクサロン、性感エステ、イメージクラブなどの場合は、一般的に、サービスとして性交渉は想定されていないため、個別に性交渉の存在を証明する必要があります。つまり、ソープランド以外の風俗店に行った事実を証明しただけでは、〈不貞な行為があった〉とは証明できないのです。

もっとも、ソープランド以外の風俗店であっても、口腔性交や手淫などのサービスが想定されていますので、配偶者があなた以外の異性と性交類似行為を行ったことで精神的苦痛を被り、〈婚姻を継続し難い重大な事由〉が生じたと主張し、⑤を根拠に離婚できる可能性があります。

現在の裁判所の考え方

裁判所は、あなたの配偶者が、風俗店を利用せず一般の女性と性交渉や性交類似行為を行った場合に比べ、風俗店を利用して性交渉や性交類似行為を行った場合を相対的に軽く評価する傾向にあります。

そのため、あなたの配偶者が一度ソープランドに行った事実を証明しても、その他の事情によっては未だ夫婦関係が修復可能であると評価して、離婚を認めない可能性もあることに注意が必要です。

それは、これから説明する慰謝料についても影響を及ぼします。

風俗店の店員に慰謝料請求できるのか?

できないと考えた方が良いです。

不貞行為を理由として慰謝料請求するための条件は民法709条に記載されています。

【民法709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

つまり、

①相手が故意または過失により権利・利益を侵害した。
②権利・利益を侵害されたことで損害が生じた。

ということです。

【民法709条】の詳しい解説はこちらをご覧ください。
2024年2月2日掲載コラム
→『
交際相手が既婚者であることを知らなかった場合、慰謝料を支払う必要があるのか?

不貞行為を理由とした慰謝料請求案件で問題となる〈権利・利益〉は、〈平穏な夫婦共同生活を維持する利益〉でした。

風俗店の店員は、あなたの配偶者が既婚者であるか否かを問わず、来店した全ての客に性的サービスを提供する者です。そのため、基本的には既婚者であるか否かを認識していないと認定されます。また、仮に認識していたとしても、風俗店の店員側はサービスの提供を断れないことが一般的ですので、あなた方ご夫婦の平穏な夫婦共同生活を維持する利益を侵害するについて故意・過失が否定される可能性が高いです。

配偶者に慰謝料請求できるのか?

できると考えて良いです。

請求が認められるための条件は上記と同じです。つまり、性交渉の存在を証明すれば、請求が認められることになります。また、性交渉の存在まで証明できなくても、性交渉類似行為の存在を証明することで、慰謝料請求が認められる可能性もあります。

一方、気を付けなければならないのは、先ほども言った通り、裁判所は、一般人との不貞行為に比べて、風俗店での不貞行為を軽く評価しているということです。なので、1回だけ風俗店に行ったことだけを証明しても、慰謝料が発生しない可能性もありますし、数万円から30万円程度と低額に評価される可能性もあります。

高額な慰謝料を貰えることもあるの?

頻度が多い、通っている期間が長い、投下したお金が多い、話し合いしようとしても応じない、指摘しても反省しない、家庭を顧みないなど、他の増額要素も併せて証明することで、配偶者から高額な慰謝料を貰えることがあります。

風俗店の利用でも慰謝料を貰える

性交渉の事実を証明できたり、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、配偶者に慰謝料を請求する事ができます。ただし、裁判所からは、一般の女性との不貞行為と比べて相対的に軽い評価をされる事が多いです。また、風俗店の店員に対しては慰謝料を請求できないと考えた方が良いです。お悩みの方は是非ご相談ください。

下記の動画も併せてご覧ください。

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